ふと、昨日の聖夜の女装姿を思い出した。
西園寺も、似合うんだろうなあ。
昨日の聖夜は、やばいほど破壊力があった。
西園寺も、同じぐらいやばいんじゃかろうか。
――俺の目に、着替える西園寺の姿が映る。
【西園寺】
「…………」
はだけたワイシャツから白い肌が覗く。
――シャツが、脱げた。
現れる白い肩。
なだらかなライン。
まだ未完成の細い線は、中性的で――
一瞬、目の前のきれいなものが少年なのか少女
なのか、わからなくなる。
い……いやいや、俺は教師。俺は男。
いかんいかん。
【悠斗】
「ふー……」
とりあえずため息。
そうだ、目を瞑っとこう。煩悩遮断煩悩遮断。
【西園寺】
「せ、先生……」
【悠斗】
「あ、な、なに?
どうした?」
西園寺の声に、思わず心臓が跳ね上がった。
【西園寺】
「あ、あの……」
西園寺の声は、俺がこれまで聞いたことのない
ほど揺れていた。
【悠斗】
「ど、どうしたどうした」
【西園寺】
「あ、あの……その……」
【悠斗】
「うおッ!?」
そこには、セーラー服に着替え終えた西園寺の
姿があった。
【西園寺】
「変……でしょうか?」
【悠斗】
「いや……」
ううむ。
自分でも、西園寺を説得するために、さんざん
使った言い回しではあるが――
これだけ似合ってればため息しかでない。
どう考えても、笑う奴はいない。
【西園寺】
「そ、そんなに見ないでください。
その……恥ずかしいです」
いつもより西園寺の言葉遣いが柔らかい。
【西園寺】
「……変じゃないですか?」
【悠斗】
「うん。大丈夫。バッチグー。
むしろかわいい。すごく」
【西園寺】
「あ……」
頬を赤くする西園寺。
あ、俺、かわいいとか言っちまった。
【西園寺】
「そんな……その……」
が、西園寺はべつだん嫌がる様子もなし。
【悠斗】
「西園寺……」
自分でも、声がうわずっているのがわかった。
やばいな。
【西園寺】
「はい……」
俺の言葉に答えた西園寺の言葉も、いつもより
ちょっと高い。
普段から少し高めだった西園寺の声が、さらに
中性的に感じられる。
【悠斗】
「あー、まあなんだ、そのー……」
とりあえず落ち着こう。
俺は、鎮静効果のある魔法の言葉を、心の中で
くり返し唱えた。
俺は教師俺は教師俺は教師。